1992年分子生物学上重大な発見がありました。

それによりアメリカ人研究者ピーターアグリ教授(現在大学学長)はノーベル化学賞を2003年に受賞されました。
それは人の体重は65%が水分が占めているが、人体を構成する細胞内にどのようなメカニズムで水が出入りするか長年謎だったことを解明した業績によります。
細胞は脂質で覆われておりそのままでははじかれて水分子は通過できません。今まで知られていたのは受動拡散と呼ばれる通り方で(脂質と脂質の分子の間を水分子が衝突しながら無理矢理くぐり抜ける)通過するという方法でした。

しかしこれだけでは充分ではありません。例えば赤血球や腎臓の尿細管上皮細胞の細胞膜は、受動拡散という方法では説明できない高い”水透過性”を有しています。

そこで、水を選択的に効率よく通過させる膜蛋白、つまり”水チャネル”が存在すると推測されてはいましたが、その確認にはいたっていませんでした。
ピーターアグリ教授は赤血球の膜から偶然発見(科学・技術の世界では幸せな偶然「セレンディピティ」といいます。)した 「アクアポリン」というタンパク質によって、その謎の扉が開かれました。

アクアポリンは「水の穴」という意味です。
このタンパク質が細胞膜にごく小さな穴をあけ、水分子を1秒間に数十億個も通過させることで、 脂の細胞膜を通して水だけを選択的に出し入れすることができるのです。
その後、京都大学の藤吉好則教授らは超低温で観察する特殊な電子顕微鏡を使うことによって、驚くべき巧妙な形に作り上げられたアクアポリンの構造を突き止め、水だけを通すしくみを解き明かしました。

 人間の体では、腎臓、消化管、目、皮膚、脳など、体中の細胞からアクアポリンが見つかっています。
例えば、肌の潤いが保たれているのも、皮膚の細胞膜に大量のアクアポリンがあるからです。
しかし、そのアクアポリンの働きに異常が生じると、様々な病気につながることもわかってきました。
慶応義塾大学では、アクアポリンの異常によって起こるタイプのドライアイがあることをつきとめ、それを改善する医薬品の開発を目指しています。
また名古屋市立大学では、ケガや病気で脳細胞がダメージを受けたときに脳がむくむ、「脳浮腫」とアクアポリンの関連を調べ、 新しい治療法につなげようとしています。

この発見は広く生物科学界に大きなインパクトを与えました。
アクアポリンはイオン化した水分子しか通過することができません。
”イオン化 ” これが水分補給のキーワードになりそうです。

   このアクアポリンページは東京医科歯科大学腎臓内科さまとNHK教育番組さまを参考に作成